ヘアヌード
昔々その昔。ヘアヌードは猥褻なのか?それとも芸術なのか?という、今となってはどうでもいいようなことが、長きにわたって論じられていました。それが解禁されたのは90年代。日本を代表するカメラマン、篠山紀信が撮影した1冊の写真集によってのものでした。
当時売れっ子の女優(今でも売れっ子ですが)、樋口可南子の写真集「water fruit 不測の事態」がそれですね。
樋口可南子写真集『water fruit 不測の事態』
ヘアヌード解禁となる記念碑的写真集「water fruit 不測の事態」が発売されたのは1991年2月です。そりゃもう長い道のりでした。解禁できたのは、篠山紀信ってところが信頼を得たのでしょうし、樋口可南子のキリッとした美しさが猥褻さを感じさせなかったというのも大きいですね。その後は堰を切ったかのように、この手の写真集がじゃんじゃん出てくるのはご存知のとおりです。
では、映像の世界はどうだったのでしょう?映画におけるヘアヌードの歴史を見てみましょう。
愛の新世界
例えば、1976年10月に公開された大島渚監督の「愛のコリーダ」は海外では無修正で放映されたものの、国内では大幅にボカシがかけられていました。こうした例は他にもいくつもあり、なかなかヘアヌードを見ることができなかったのです。
それが90年代以降、ようやく事実上ヘアヌードが解禁となります。日本における初のヘアヌード映画は、1994年公開の「愛の新世界」でした。
愛の新世界
ヘアヌードを披露してくれてるのは鈴木砂羽と片岡礼子のお2人です。
因みに日本映画で初のフルヌードを披露したのは前田通子で、1956年公開の「女真珠王の復讐」とされています。結構古いんですね。それから38年後にしてようやくヘアヌードです。苦節38年!関係者のご苦労が忍ばれます。
監督は高橋伴明。高橋伴明といえば、「TATTOO(刺青)あり」や「獅子王たちの夏」など、小粒ながらも上質な作品で知られている監督です。
しかし、まぁ、この映画、写真の印象が強烈で、荒木経惟の印象が強く残ります。荒木経惟とは勿論カメラマンのアラーキーですね。まぁ、流石です。インパクト大。いい仕事してます。
墨東綺譚
さて、時代が前後しますが「濹東綺譚」を紹介しないわけにはいきません。
「濹東綺譚」は、樋口可南子の写真集が発売されてから1年後の1992年夏に上映されています。ヌード場面はぼかされていたのですが、後に発売されたビデオでは無修正版がリリースされています。「愛の新世界」よりも早くヘアヌードが撮られていた訳です。が、まぁ、このような経緯の映画は他にもありますから特別というわけではないのですが、いえ、特別ではないとはいえ、「濹東綺譚」でヘアヌードを披露してくれているのが墨田ユキというところが非常に嬉しいのです。
濹東綺譚
墨田ユキの美しい肢体と大胆なラブシーン。その香り立つようなエロティシズムは最高です。
そしてまた、相手役の津川雅彦がイイのです。艶っぽいというのでしょうか、イイ役者だなぁとしみじみ思います。
「濹東綺譚」の原作は永井荷風で、1960年、1992年、2010年と現在までに3度も映画化されています。
この1992年版で監督を務めたのは新藤兼人。新藤兼人といえば日本のインディペンデント映画の先駆者で、 モスクワ国際映画祭グランプリを受賞した「裸の島」や「裸の十九才」、「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」など多くの優れた作品で知られています。
あ、そうです。それともうひとつ大事なことが。この映画の配給は非商業主義的な芸術作品を製作・配給していた日本アート・シアター・ギルド(ATG)なのですが、ATG最後の作品としても知られています。
南京の基督
「愛の新世界」からちょうど1年後の1995年12月、富田靖子のヘアヌードが拝める「南京の基督」が公開されます!しかし、富田靖子のヘアヌードと喜んでばかりもいられません。とても難しい役に挑んでいるんです。なんといっても娼婦。しかも梅毒に侵された娼婦ですからね。まさに体当たりの演技です。